ISBN:406210783X 単行本 金城 一紀 講談社 2001/09/30 ¥1,239

 レビューのレビュー。

「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」(この2作はシリーズ的な関係)と金城作品を一気に読んで、充電完了。 そして何か読んだ後には、Amazonのレビュー全部に「参考になった/ならない」と投票する。
 面白いのは、金城一紀作品のレビューは、その人の身近なことが引用されていたりと「共感」のコメントが非常に多い。 だから、一見単純で拙いものでも言いたいことが分かれば、うんうん、と「参考になった」のボタンを押してゆく。 レビューなのに読みながらだんだん涙腺がゆるんでくる。

「GO」での国籍や偏見から始まって、「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」では、どんどん「人の作った境界」を痛快に軽々と壊してゆく。 その「壊す」過程で、軽妙な文体の中にこっそり重いものが仕込まれている。 それがまた非常に感覚的にスッと浸透してくるからクセになってしょうがない。

 クライマックスの手前で泣けてくるのは私だけだろうか。
 前戯に重きを置く、じゃないけど、そのあたりが一番ツボにハマって、読後はすがすがしい。
 内容はといえば、いわゆるオチコボレ高校生と、「フライ、ダディ、フライ」ではどこにでもいるような平均的サラリーマンの話だ。 でもそんな形容は表面的なものでしかなく、読み始めてしまえば、魅力的なキャラクターとストーリーに引きずり込まれて離れられなくなるだけ。

 日常でぼやいていることが、いかに受け身でくだらないことか思い知らされます。
 (といっても、そのうちぼやくんだろうけどね)